かっぱの書棚

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死霊術教師と異界召喚/降次飛行

 

死霊術教師と異界召喚 (富士見ファンタジア文庫)

死霊術教師と異界召喚 (富士見ファンタジア文庫)

 

 評価:☆★★★★

 

 

 

<感想>

死霊術は最も優れた学問だ!!

 

トラン・スピンタートは魔法を使いこなせない落ちこぼれ教師だ。母校で死霊術教師として赴任してきた彼の腕前に疑問を抱く少女・ピーシアは彼の過去を知っていた。死霊術に才能がある生徒を育てるためのゼミでも全く人が集まらない現状を憂うトランではあったが、運悪く魔術名家でもあるピーシアの邸宅に忍び込むことになってしまったところから物語は動き始めて──

 

 

 

ラストシーンがめちゃくちゃ熱い!! 序盤の空気感やキャラクターの癖のある感じに初読時はするっと読めないところもあったんですけど、もう種まきの終わった中盤以降の物語の核心部分から止まらなくなります。トランが漢になるのもピースとの掛け合いも全てひっくるめてラストシーンがたまらなく好きだ。

 

死霊術というマイナスイメージから始まる魔術が世界を救う構図は純粋に読後感のすかっとする爽快感を演出していていいなあとも思いますし、そういう世界の命運が一教師に委ねられて振り回されながらも奔走するみたいな好きな人にはドンピシャな物語かと。

 

また、死霊術といえば呼び出した死霊たちのキャラクターの濃さに尽きると思います。相棒であるガイコツのデニス・バスケス、化け猫のシャムシャム、屁こぎ竜のヨル。どいつもこいつも癖がありすぎて僕は一瞬戸惑ったところもあるのですが、こいつらがまた読んでるうちに愛着が出てくるんですね。

 

ヒロインであるピースも典型的なツンデレチョロインヒロインではあるのですがトランの人柄に触れることで不信感や不満が徐々に解消されていって惹かれていく流れは王道のそれでピースのヒロイン力を極めて上質のものにしていたなあ、と。

 

それに主人公のトランがすげーいい奴です。気取った話し方や自分の顔を隠すためにマスクなんかもつけたりする彼ではあるのですが、自分みたいな生徒を生み出したくない気持ちも持っているし、ある種、世界を変革できてしまうほどの能力を持っているのに奢らないトランの優しい心根があったからこそ読後感に良い味わいが出ているなぁと感じました。