かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

完璧な佐古さんは僕みたいになりたい/山賀 塩太郎

 

お気に入り度:★★★★☆

 

<感想>

ワガママな女の子が結局一番かわいい!!

完璧美少女の佐古さんは、モブな僕のために今日も落ちぶれます

佐古町香は完璧だ。
トップの学力に、誰もが振り向く可愛い顔。
部活でも期待されていて家庭的だから、全校男子憧れの的。

「あなたが……好き」
えっ、そんな佐古さんが、僕に告白!? 

でも、モブ男子の僕が、彼女の隣にいるべきじゃない! 
なのに――
「この髪、不細工だよね?」
「私のふともも、ずっと見てたもんね」
綺麗な長い髪を切ったり、スカートを短くしたり、
"完璧な佐古さん"らしからぬ姿で僕に迫ってきて――

「私が完璧じゃなくなれば――振り向いてくれるよね」

でもそれは『平凡な僕と釣り合う恋人』を目指すアプローチで!? 

完璧なのに残念可愛い佐古さんとのラブコメ、開幕!

 

こんばんは、カッパです。

今回は第34回ファンタジア大賞<銀賞>受賞作である「完璧な佐古さんは僕みたいになりたい」の感想記事となります。

 

あらすじにもある通り佐古町香という少女はヒロインとして本当に強くて、周囲のイメージとは裏腹に不器用なところも含めて愛されるキャラクターだと感じました。

 

反対に主人公である津吉晴は必要以上に自己評価がめちゃくちゃ低い男の子で、欲しいところで一歩を出してくれないところに焦れったさを覚えたりして個人的にはそこがヤキモキしたりもしたのですが、やっぱり佐古さんが良い味を出して物語を転がしてくれるのでラストは力強くも爽やかな読後感でした。

 

さて、物語はというと津吉晴が容姿端麗で性格も良く学業まで優秀として学校でも名の通った佐古町香から告白されるところから物語は始まります。告白に対しての答えはNOでした。自分に自信を持てない津吉が唐突に完璧ヒロインから告白されたものだからびっくりしちゃうわけですね。

 

その理由は「佐古さんが完璧すぎる」から断ったというもので、何を思ったのか佐古さんはその言葉を額面通りに受け取ることで、自分が完璧じゃなければ付き合ってもらえるかもしれないと拡大解釈をしてどんどん完璧から足を踏み外していく展開。

 

大和撫子を彷彿とさせる長い黒髪を切り、スカート丈を短くし、不味い弁当を作ってきたり、ひたすらに繰り返されるのは私は完璧じゃないですよというアピールの応酬。

 

そこまでして彼女が津吉に振り向いてほしいのにはしっかりと理由があって、愛らしい佐古さんからのアプローチと周囲の人間の言葉によって津吉が少しずつ自身の心の在り方を変えていく。そんな青春チックな物語となっております。

 

まあ、もう特筆するまでもないんですがヒロインの佐古さんがとにかく可愛いんですね。なんとか完璧でなくなろうと津吉の前では自分らしさを捨ててダメな女の子を演じようとする一挙手一投足が新鮮な読み味で、それでも津吉の鈍さも手助けして空回る感じがなんとも独特なこの作品の色を出していました。

 

また、二人にはそれぞれ近しい友人の存在もあって、その存在がとにかく自信がない津吉のことを後押しする流れに繋がっているのは王道とはいえやっぱり自分の好きな文脈です。

 

終盤の終盤で津吉の友人である拓海が出し続けた助言について間違っていた旨の発言をするんですけど、個人的には全然そんなことなくて、彼の言葉があったから津吉がそもそも前を向いたのだとするなら、きっと彼の行いは正しかったのだと思うんですよね。

 

でも自分から折れて最後には訂正する。そして、すかさずその言葉を否定して感謝する津吉には確かな彼の成長と友人としての良い関係性を見ることができて良かったです。

 

津吉のイメージは僕個人としてはあまり良くないんですけど、佐古さんがひた隠しにしてきた海外留学のことを知って、佐古さんがこんな自分のことを好きになった理由を知って、最後の最後で走り出す展開は青春の象徴を背負った主人公のそれでとても気持ちが良かったです。