かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

ラノベ作家になりたくて震える/嵯峨伊緒

 

ラノベ作家になりたくて震える。 (電撃文庫)

ラノベ作家になりたくて震える。 (電撃文庫)

 

 評価:☆★★★★

 

 

 

<感想>

 痛々しいワナビ根性溢れた主人公をどう受け止める!?

 

ひとつのジャンルにもなった業界モノラノベなのだろうなあとタイトルから察しました。高校生にしてライトノベル作家になった苦悩や業界の暗部などを描いた作品なのかなあ、と。

 

けれど、中身を開いてみれば完全に業界ネタは排除されていて主人公とヒロインの二人の物語として形になっていました。それが良い悪いという話ではないのですが主人公の作品を倒錯してヒロインが受賞したという設定にうまく絡んだ魅せ方になっていて感心しました。

 

また、きっと今までのラノベ作家モノよりも主人公が読者に好かれるような性格をしていないところも違った味かなあ、と。はっきりいって作家志望のワナビ―だからこそここまでこじらせた性格でも成立しているところがあって。たとえ自分の作品だとしても他人が受賞したモノの続編を書こうと思うのか、なぜ受賞できたんだと改めて読むことはしない傲慢な態度の根拠、そのあたりのボタンを掛け違えた感覚であったりに作り物として媚びずにリアルな筆致で描き切ったのは意欲的だなあと感じずにはいられなかった。

 

ラノベ作家という道具をつかって”盲目的”な少女と少年の青春モノとしては手堅い出来になっているのではないかと思いました。