かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

白翼のポラリス/阿部藍樹

 

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

 

 お気に入り度:★★★★★

 

 

 

<感想>

この空と海の物語が大好きだ!!

 

 

はるか昔に陸地のほとんどを失った蒼き世界、ノア。人々は巨大な船に都市国家を作り、わずかな資源を争って暮らしていた。飛行機乗りの少年・シエルは、そんな“船国”を行き来し、荷物を運ぶ“スワロー”。愛機は父の遺した白い水上機ポラリス”。彼は無人島に流れ着いた少女・ステラを助ける。素性も何も語らない彼女の依頼で、シエルはステラを乗せて飛び立つことに。その先には、世界の危機と巨大な陰謀が待ち受けていた。

 

再読。

何度読んでも物語の展開がキャラクターが文章が僕の心を掴んで離さない。今年勧めたいライトノベルはなにがあったかなと思い返していたらこの作品を真っ先に思い出しました。

 

空を自由に飛び回る主人公。正体は明かせない謎の少女。そんな二人が出逢うところから大きく物語は動き出す王道のボーイミーツガール。この鉄板の設定から繰り広げられる空と海の物語は僕の琴線をそれはもう刺激してくれる一冊。

 

舞台となるのは陸地をほとんど失い船の上で生活を余儀なくされる世界《ノア》。人々は船の上に都市を築き上げて毎日を過ごしていた。スワローと呼ばれる少年・シエルはそんな船から船へ時には荷物を届け、時には手紙を届け、時には人を送り届けるのがお仕事。

 

もうこれだけでめちゃくちゃロマンに溢れてるのはわかりますよね。陸を失って大きな船を海に浮かべてその上で国民が生活をしている。それは多くない資源を切り分けながら生きていくというシビアな生活よりも先に海と空の青だけが広がる世界が想像できてワクワクしちゃいます。

 

シエルがスワローになったきっかけは行方不明の父親がきっかけだった。それはもうスワローとして名の知れた男だったのに世界の果てを目指して帰らぬ人となり、愛機の《ポラリス》だけがシエルの元に帰ってきた。そんなポラリスと余暇を楽しもうと無人島に立ち寄ったシエルの前に一人の謎の少女・ステラが偶然にも流れ着きます。ここから動き出す物語がたまらなく愛しい。

 

まずキャラクターの関係性としてもシエルとステラの対比構造が関係性でいい味を出してます。自由に空を飛び回れるはずなのに超えられない父親の幻影につきまとわれたシエル。ひた隠しにしている正体のせいで自由でいられないはずなのに人一倍思考も行動も自由なステラ。

 

互いが互いの持ち合わせていないものを持っているからこそ二人で一緒に成長していく描写に説得力が出て読後感を爽やかなものに仕上げています。主人公であるシエルが成長するのはわかるんです。それがエンターテイメントだから。ただ同時にヒロインも成長する描写が一巻からしっかりと押し出される作品って多くないのでこの作品はそういう意味でも僕の胸に響いたのかな、とか。

 

初めこそ空を二人で飛ぶだけの綺麗な物語なのかなと浅い読みをしてしまいがちな本作ですが、読んでみると物語のスケールが思っていたより大きいです。少年と少女が出会って、そこから世界の命運をかけて展開する物語が大好きな人にはもうぜひぜひ推したい一作。

 

一人の少女と出会って独りぼっちだった飛行機乗りが空を飛ぶ意味を、スワローとして生きる意味を見つけるまでの物語、いつ読むの?

 

今でしょ!