かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

コンビニ強盗から助けた地味店員が、同じクラスのうぶで可愛いギャルだった/あボーン

 

お気に入り度:★★★☆☆

 

<感想>

大事なところで外してくるのがとことん勿体ない

ただ、君と居たい。それだけで、いい。ひとりぼっち同士の恋物語

「今日から、あたしの家に……泊まる?」

 高校二年生の黒峰リクは、幼馴染に振られて自暴自棄になったところ偶然入ったコンビニで強盗に襲われていた店員を助ける。
 その店員は学校でいちばんモテる美人ギャル・星宮彩奈だった。
 この件をきっかけに星宮からストーカー被害を相談され、一人暮らしの彼女を守る名目でふたりは同棲することに。

「黒峰くんがいると安心できそう」
「起きてー、朝ご飯作ってあるよ」
「よかったら一緒に食べない?」
「すごいね黒峰くん、本当に、頑張って…生きてきたんだね」

 星宮と一緒に暮らす中で、リクは生きる気力を取り戻していく。
 涙が出るほど切実なひとりぼっち同士の、甘くて眩しい恋物語

 

こんばんは、カッパです。

今回は「コンビニ強盗から助けた地味店員が、同じクラスのうぶで可愛いギャルだった」の感想記事となります。

 

この作品に関しては、読んでみて真っ先に思ったのが勿体ないということ。

 

というのも、Web版は未読なのでその辺りに言及することはできないのですが、おそらく書籍化するにあたってがっつり改稿はされてると思うんですよね。それが悪く出てしまったのかまでは定かでないんですけど、随所に見受けられる良さと惜しさが入り混じっているような印象を受けました。

 

個人的には中でも見せ方がすごく勿体ないと思ったんですよね。

 

さて、物語は幼馴染・春風陽乃にフラれたことをきっかけに自殺を目論む少年・黒峰リクが道中で見つけたコンビニを訪れるところから始まります。そのコンビニに強盗が押しかけてくることになり、地味な店員へと包丁を突きつけちゃったりするんですね。

 

もちろん何もできない店員さんとお金を要求するコンビニ強盗。リクはその間に割って入るような形となり、結果的にコンビニ店員を助けることになります。このときのコンビニ強盗へのリクの接し方が俺自殺するんで殺してくれちゃっていいっすよみたいなクソ独特なノリでもう突っ込みどころが満載。

 

お前どんだけ幼馴染が好きだったんだよって気持ちと、いやいや強盗さんもそんなんで折れちゃってええんかって気持ちが頭の中でオーバーラップするわけなんですよ。開幕のインパクトという意味ではがっちりと読者を掴む良い導入だったのではないかと個人的には思っています。

 

で、その助けた地味店員が実は同じクラスの人気の高いギャルである星宮彩奈だったというプロローグになるわけです。そして、なし崩し的に彼女の家に上がることになり、ストーカー被害に遭っている彼女のことを助けることになるというのがざっとしたあらすじになります。

 

で、上述した見せ方が勿体なかったというのは幼馴染である陽乃なんですよね。

 

振った相手であるリクに対して悪気もなくぐいぐいくるし、なんなら彩奈と仲良くしてると不満そうに邪魔してこようとする。後々にこの部分に関してはネタ明かしがあるんですけど、この序盤のムーブでのマイナスを引きずったせいで終盤になっても彩奈に対してちょっとネガティブな印象を持って発言に対しても揚げ足を取りたくなっちゃった梨したんですよね。

 

その他にもシリアスな空気感を孕みながらも唐突に放り込まれるギャグなんかも笑っていいのか微妙な温度感が漂っていたりして、細かい部分で調理の仕方が惜しかった印象です。

 

ただ良かった部分もあって、この物語って最後まで読めばタイトルと表紙からは想像できないくらいに重たい物語なんですよね。それは終盤で明かされるリクと彩奈の意外な関係性も含めて驚きのヘビーさなんです。

 

だからこそ、リクにしても彩奈にしても欠損を抱えたキャラクターであることは読んでいればわかることなんですけど、それを重たく描かずにポップに明るく描く。けれどそこに必要以上の違和感を生み出さない絶妙なバランス感覚があると思っていて、そこは読んでいて良いなあと思う箇所でした。

 

また、初々しいラブコメディとしてもリクと彩奈の心の通わせ方であったり、ちょっとした掛け合いには味があってそういうところも頭を空っぽにしてさらっと読めるライトさは推せるなあと思うんです。

 

ゆえに、大きなノイズを伴ってしまう部分があるのはちょっと勿体なかったなあと思うわけなのです。というか続刊への引きにしてもそうなんですよ。いやいや、なんてところで終わらせてくれてるんだって叫びたくなってしまうほどです。

 

さあ、ここからが大事だというところで幕切れになっているので続刊も読もうとは思っていますが、終わりよければすべて良しと言いたくなる綺麗な着地を次巻に期待して今日はこのくらいで。