かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

俺もおまえもちょろすぎないか/保住圭

 

俺もおまえもちょろすぎないか (MF文庫J)

俺もおまえもちょろすぎないか (MF文庫J)

 

 お気に入り度:☆★★★★

 

 

<感想>

イチャラブから学ぶ彼氏彼女になるということ!!

 

 

付き合ってください!―少しでも“いい”と思ったらすぐに告白してしまう少年・星井出功成。そんな彼の前に一人の少女が現れる。初鹿野つぶら―彼女は、超がつくほど生真面目な性格で、どんなことでも真正面から受け止めてしまう子だった。誰にでも告白するナンパ男と思われている功成のことも、何か理由があるのだろうと一つ一つきちんと話を聞いてくれて…「好きだ!」そんな彼女に“俺のことを理解しようとしてくれた”と感動した功成は、すぐに告白!対するつぶらは「私で喜んでもらえたのが嬉しい…この気持ちを理解したいのでもっと教えてくださいっ!」と、なんと付き合うことに!?2人の恋路はまるで転がり落ちるように進展して―いく?

 

いやあ、保住圭でした。これくらい甘ったるく仕上がったラブコメを頭からっぽにして読みたくなるタイミングというのが僕にはあります。ちょうどドンピシャな作品だったかなと。

 

主人公である星井出功成は惚れっぽい少年で、いざこの人だと決めたらすぐに告白してしまうところがあった。一方でヒロインである初鹿野つぶらは驚くほどに真面目な性格をしており、どんなことでも逃げずに受け止めてしまうところのある女の子で。

 

功成はそんな自分のことを真正面から受け止めてくれたつぶらに思い切って告白をする。なんでも受け止めてしまうつぶらは功成の気持ちを理解したいと二人が付き合うところから物語は始まります。

 

これ、もうメチャクチャ甘々です。俗に言う恋人の成り立ち方って色んな思い出を積み上げてから好きなんだって理解して晴れて結ばれることが実に多いです。この作品はどっちかというと付き合っていく中で本当の好きと出逢う物語という構図になっています。相手の行動や発言に対して答えの出ていない感情に振り回される感じ。そこがよりイチャ度を増している気がしてグッドでした。

 

何にも増してメインのキャラクターが良かったです。功成は”ちょろい”設定を遺憾なく発揮していて物語上で落ち込みポイントがあっても凹みすぎないんですよね。周りからの言葉にすっと立ち上がる。ここまで心根が素直でポジティブだと清々しくて心地良いです。

 

つぶらに関しては中学生という設定が活きていました。年下ヒロインにしたいだけで中学生にしましたと作者の都合が透けて見えるキャラクターメインキングってよくあるとは思うんですけど、そうでなくしっかりと中学生でなければいけない理由が用意されていた点、そこがうまく物語のテーマとも噛み合っていて読後感がすかっとしていたように思います。

 

キャラクターの成長物語を主軸にイチャラブ全開で紡がれたラブコメとしては本当に手堅くがっちりまとまっていましたし、保住先生の色もしっかり出せており、満足度は高いかなと。

 

ただ幼馴染の梅ちゃんの扱い方が僕は少しもやっとしたりもしました。いつだって傍で功成を見てきた彼女がこの物語に必要なのはわかるし、その役目もしっかり務めて欲しいところでその顔を見せてくれていました。

 

けれども、物語の歯車になりすぎていたというか、あくまで功成とつぶらの物語であることはわかった上でもう少しストーリーに介入していた方が彼女の見せ場はぐっときたのではないかと考えたりもします。

 

そうは申しても功成にはつぶらが、つぶらには功成が、ぴったりすぎる二人の間に付け入る隙がないことを演出するために傍に居続けたのにまるで気持ちにも気づいてもらえない梅ちゃんが必要だったことは強く理解できます。

 

ちょっと切ない役どころではありますが、作品のために人柱となった梅ちゃんに敬礼して締めたいと思います。

 

梅ちゃんに、敬礼!!