かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

男女の友情は成立する?(いや、しないっ‼)Flag1.じゃあ、30になっても独身だったらアタシにしときなよ?/七瀬ナナ

 

 お気に入り度:★★★★★

 

 

<感想>

日葵、お前は最高にめんどくさかわいい!!

  とある田舎の中学校で、ある男女が永遠の友情を誓い合った。1つの夢に向かい運命共同体となった二人の仲は――特に進展しないまま2年の歳月が過ぎる……!
 未だに初恋がこない陽キャ女子・犬塚日葵と、花を愛する植物男子・夏目悠宇は、高校2年生になっても変わらず、二人だけの園芸部で平和に親友やっていた。
「悠宇が結婚できなかったら、アタシが責任取ってやんなきゃねー」「日葵がそれ口走ってから、おまえの兄さんが『義弟くん!』って呼んできて辛いんだけど」
 ところが、悠宇が過去の初恋相手と再会したことで、突如二人の歯車が狂い出す!? 果たして恋を知った日葵は「理想の友だち」脱却なるか?

 

いやあ、実に良いラブコメを読みました。僕は大好きです。

親友でいようと自分から口に出しておきながら勝手に好きになって、べつの女の出現に勝手に慌てて、構ってもらおうと勝手に嘘までついて、勝手にめんどくさい女になる犬塚日葵が非常に僕のツボを突いてくれました。

 

後半からポンコツ化する日葵、最高に可愛くありませんか?

 

物語はアクセサリークリエイターを目指す夏目悠宇が自分の店を持つために親と文化祭で完売する約束を取り付けるところから始まります。無名の中学生のアクセサリーなんて売れるはずがない。

 

自分の夢を諦めないといけないのかと現実に直面したときに現れたのが犬塚日葵です。有名な家に生まれ類まれな容姿に恵まれた彼女が宣伝をすることで瞬く間にアクセサリーを完売へと導く気持ちの良い展開。

 

二人は約束をします。

悠宇がアクセサリークリエイターを目指し続ける限り自分は味方でいるから親友になろうと。

 

こんな導入から始まる二人の関係性はもうバカップルです。紛うことなくバカップルです。教室でいちゃつき、授業中でもいちゃつき、所かまわずいちゃつく。おふざけの多い日葵にツッコむ悠宇の相性は抜群で、周囲も認めるほどの仲の良さ。

 

恋仲にこそ発展しないものの二人だけの距離感、二人だけの温度感で紡がれる息がぴったりな会話劇は読んでいて最高に気持ちがよいものでした。

 

そんな変わらないと思われた二人の仲に割って入るのが悠宇がアクセサリークリエイターを目指すきっかけにもなった初恋の少女・榎本凛音。

 

彼女が二人の仲をかき乱します。

見方によれば彼女は完全に噛ませキャラの立ち位置ではあるんですけど、最高の噛ませ役です。

 

近すぎて気づかないことがある。親友だと思っていた悠宇が遠くに行ってしまいそうな気がして、自身の恋心に気づいてからの日葵の可愛さはそれはもう最高の最高でした。

 

結論にもなることを作中のヤリチンクソ野郎の真木島が触れています。相手のことを好ましく思う気持ちにつける名前は『友情』だって『恋慕』だってどっちでもいいんですよね。

 

望むらくは二人にはこのまま親友を続けてもらって、30歳になったからしょうがないなぁって結婚しちゃうような、でもぜんぜん満更じゃないというか、本望というか、そんなラストを今から想像してしまってニヤニヤできる一冊でした。