かっぱの書棚

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俺の女友達が最高に可愛い。/あわむら赤光

 

俺の女友達が最高に可愛い。 (GA文庫)

俺の女友達が最高に可愛い。 (GA文庫)

 

 お気に入り度:★★★★★

 

 

<感想>

友達だからこそ築ける関係性!!

多趣味を全力で楽しむ男子高校生中村カイには「無二の親友」がいる。
御屋川ジュン――学年一の美少女とも名高い、クラスメイトである。
高校入学時に知り合った二人だが、趣味ピッタリ相性バッチリ!
ゲームに漫画トーク、アニソンカラオケ、楽しすぎていくらでも一緒に遊んでいられるし、むしろ時間足りなすぎ。
「ジュン、マリカ弱え。プレイが雑」
「そゆって私の生足チラ見する奴ぅ」
「嘘乙――ってパンツめくれとる!?」
「隙ありカイ! やった勝った!!」
「こんなん認めねええええええええ」
恋愛は一瞬、友情は一生? カノジョじゃないからひたすら可愛い&ずっと楽しい!
友情イチャイチャ満載ピュアフレンド・ラブコメ!!

とても面白かった。男女間に友情は成立するのかというのはずっと昔から議論が重ねられてきた議題だけど、そこに真正面からぶつかったラブコメだ。

 

きっとオタクが一度は夢見ていやいやそんな都合の良い女の子はいないよと首を振って諦めてきたヒロインがここにはいると思いました。

 

物語は高校に入学するところから始まります。入学早々にゲーム機を取り出してゲームを始めるジュン。触発されるようにゲームを始めるカイ。ある種、異様な光景にも見えるけれど、同じものを愛して、同じ感性を持ち合わせる女子って最高だなあと再認識させられた気がします。

 

この物語の面白いところはあくまで二人が互いの関係性を友人だと称するところにあると思います。休日はカイの家に寄生するように遊びに行って、常に二人一緒でゲームに取り組む。距離感が驚くほど近く、互いに気兼ねないやり取りができる。これって恋愛感情をあえて意識しないからこそ成立する関係性だと思うんですね。

 

勿論そんな二人のことを邪推する人というのは出てきます。口ではそう言いつつも実は付き合ってるんじゃねーの? きっと僕が作品内にいたとしても疑り深くなってしまう気がします。それでもあくまで二人の間にあるのはお互いの趣味嗜好への共感であり、浮ついた気持ちから傍にいるわけではないというところに新鮮な感情を味わえたりもします。

 

また、カイの男らしいところがいいですよね。二人の仲を疑ってリア充グループに目をつけられたカイが囲まれて暴力を振るわれるシーンがあります。そこでもどれだけ暴力に訴えられても俺たちは友達だし距離は取らないんだと暴力で返さずに真摯な感情で反発する姿がとても印象に残っています。

 

終盤の作品のテーマ的な部分にも今後の期待を寄せられる部分があります。それはジュンのことを大事に思うシスコン兄貴である王子さんとの衝突です。カイはあくまでジュンとの関係性は友人だと宣言する反面、王子さんはそんなはずがないと突っぱねるシーン。

「だってジュンは友達だから!

カノジョにするより、友達の方が絶対に良いから!」

王子さんも感銘を受けたこのセリフがとても胸に響いています。彼女にするとなると面倒くさいことが沢山あるんですよね。周囲の目を気にしないといけなかったり、お互いが釣り合っているのかを考えないといけなかったり、面倒で他ならない。一緒にいて楽しければそれでいいんじゃないかという主張は何も間違ってないんですよね。

 

この言葉を前にして王子さんもカイのことは認めたし、王子さんの行動にも良い影響を与えるんですよね。それはうまくいっていない奥さんとの今後のことなわけで。確かに友達同士の関係性に勝るものはないのかもしれない。それでも、友達関係よりも夫婦関係の方が絶対に良いのだと。そう証明するために王子さんも奥さんとの関係を改善しようと胸に秘めるシーンは実に同じゲーマーらしくていいじゃないかと思うんです。

 

バイト先の琴吹から告白される引きもあいまって、今後の展開がどのように転がっていくのか読めないところもありますが友達だからこそ良いと主張するカイの背中を素直に追いかけたくなりました。