かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

君死にたもう流星群/松山剛

 

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

 

 お気に入り度:☆★★★★

 

 

<感想>

ここから物語がどう進むか非常に気になる!!

 

 

二〇二二年十二月十一日。それは僕が決して忘れられぬ日。その日、軌道上の全ての人工衛星が落下し、大気圏で光の粒となり消えていった。『世界一美しいテロ』と呼ばれたこの現象にはたった一人、犠牲者がいて…!引きこもりの少女・天野河星乃を救うため、高校生の平野大地は運命に抗う。「まさか読み終わる頃に自分が泣いているなんて考えもしませんでした」「切なさ、絶望、一縷の望みと試行錯誤の日々、さわりだけ読むはずが先が気になってもう止まりませんでした」「この作品を読んで僕も夢を諦めたくなくなりました」発売前から多くの人を感動に巻き込んだ『宇宙』と『夢』がテーマの感動巨編スタート!

 

数千の人工衛星が空に降り注いだ世界で一番美しいテロ。この響きだけでも非常に大きなスケール感で物語が始まっていることがわかる。この導入からすれば本編のまとめ方は少し小さく感じてしまうかもしれない。

 

ただ僕は言いたい。これはどこにでもいる少年が何かに夢中になることの素敵さに気づく物語だ。手のひらに収まるくらいのお話から始めてもいいじゃないか。自分だけの歩幅で、自分なりのやり方で、少しずつ夢をあたためていく。そういう時代って大切じゃないですか。

 

物語は世界一美しいテロから三年後の世界を舞台に始まる。世界中が熱狂したはずの輝かしい歴史とは裏腹に落ちるところまで堕ちた主人公・大地の荒れた生活描写から物語が動き出すのは折り合いをつけられていない『世界』とのうまい対比になっていて面白い。

 

何も知らない『世界』にとっての流星群も大地にとっては列記とした別物。流星群の正体は人工衛星の墜落。最年少で宇宙飛行士となった大地の同級生・星乃はそんな衛星のひとつであるISSに搭乗していた背景がある。つまるところ世界一美しいテロは大地にとって大切な人を失った事件に他ならない。

 

だからこそ大地のドロドロの心情がこれまた良いなと読んでいて感じる。周りに対しての羨望、嫉妬。自分のやるせなさや情けなさの持っていく場所が分からなくて当り散らしてしまう。それだけ大地にとって星乃の存在が大きかったことが敢えて語られなくても見て取れるように強調されていることがわかる。