かっぱの書棚

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落第騎士の英雄譚 11/海空りく

 

落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)11 (GA文庫)

落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)11 (GA文庫)

 

 評価:★★★★★

 

落第騎士シリーズ、九ヶ月ぶりの刊行! 

 

<感想>

ヴァーミリオン皇国編、エンジンかかってきましたね!!

 

七聖剣舞祭が最高すぎたと思うんです。物語の勢いも熱さも最高潮で読んでいてワクワクとハラハラが止まらなかった。そんな前振りがあったからこそ10巻を読んだときにちょっと心配に思ったりもしました。けれど、なんのその! 10巻はただの前哨戦! しっかり物語に勢いが戻ってきてくれて大満足の一冊でした!

 

舞台はヴァーミリオン皇国。紆余曲折ありながらもヴァーミリオン皇国の人々に受け入れられた一輝は隣国クレーデルラントとの『代表戦』を控えながらもステラの父親に自分のことを認めてもらおうと試みていた。そんな折、一輝はクレーデルラント側からの招待により、ステラとその姉であるルナと隣国へ足を運ぶことになる。王子ヨハンを筆頭に街から盛大にもてなされる一輝たちはまだ気づかない。ステラに執着する《傀儡王》オル=ゴールが水面下で足音を忍ばせて近づいていることを。みんな平和が好き。いがみ合うより笑い合う方がいい。果たして、ステラの望みは叶うのか──

 

いや、もう前半と後半のギャップがすごい! 前半ではステラを渡したくないステラパパが一輝に決闘を挑むというコメディチックな日常パート。天丼で重ねられるストーリーとそれに対するステラやステラママの反応からステラの育った環境なんかも感じ取れる良い構成となっていたと思います。

 

一転して後半は今まで以上の絶望が一輝とステラを襲います。これまでも大変な苦労が課されてきました。一輝は周りと比べて明らかに劣っている魔力に対しても諦めずに希望は捨てずに積み重ねた努力と経験で向き合ってきた。けれども、今回直面するのはゲームではないのです。試合でもないです。本物の戦争。ルールもない無法地帯に晒されるFランクの騎士。今後、どのように立ち向かっていくのか考えさせられましたね。

 

敵のメンツも一介の学生騎士から魔人にクラスアップ!

一輝とステラの無双物語にしてしまわないための工夫だとは思うのですが、ちっとばかし強すぎやしませんかね? 上には上がいる。七聖剣舞祭で力をつけたからこそ正しく力量を見極められたステラには確かな成長を感じました。

 

また、今回のMVPキャラは間違いなくステラのお父さん、シリウスさんだって話がしたいんです!

前半パートでは娘を譲るわけにはいかないのだと父親らしく駄々をこね、後半ではヴァーミリオン皇国の王らしい大胆な決断を下します。絵空事。理想論。けれどこの国だからこそ許される。この国の兵隊だからこそついてくる。そんなオンリー感に胸にぐっときました。ステラパパほんとカッコ良すぎてこういうキャラのひっくり返し方が僕は大好きで、ああ血は争えないんだな。さすがステラパパだと感心させられてしまいました。

 

まだヴァーミリオン皇国編は始まったばかり。敵はオル=ゴールだけじゃありません。学生騎士から覚醒した魔人たち。一筋縄じゃいかない。それこそ戦闘力のインフレと言っても過言じゃない面々に一輝たちはどう立ち向かっていくのか。いやはや、今から楽しみでなりません。