幻想戦線/暁一翔
お気に入り度:☆★★★★
<感想>
荒削りを帳消しにする魅力的な設定!!
この作品なんといっても設定で魅せる作品だと思います。兵士養成機関で育てた兵士を競売として国に買い取ってもらうという大胆な設定。これだけでぐっとそそられるものがあるのに、そこに”命の固形化”という魅力的なオリジナリティが加われば鬼に金棒。読み始めた直後からどうなるのだろうと胸がドキドキしていました。
物語としての落とし方もすごくいいです。若くして持て余した巨大すぎる力に心が追いついていない少年として顕著に描かれたハイトがこれからも戦うことで生きていくのか、それともトラキアのために戦わずに生きていくのか。そこの大きなテーマへの答えの出し方がすごく気持ち良くて読後感はすっきりします。
バトル良し、設定良し、僕の好みとしても良しな本作ではあるのですが、キャラクター面だけは少し足りていなかったかなと思ったりもしました。というのも戦うことで変えたいハイトと戦わないことで変えたいシンクという正反対のキャラクターをメインに据えたことや一癖ある侍女のマリー、ハイトの心を掴む笑顔を見せたアクア、視野の広い温厚な執事オードとめーちゃくちゃ魅力的な登場人物に溢れてるんですね。
ただこのキャラクターたちを使いこなせていない! この年齢で王となったシンクの見せる年相応の表情とかすごく素敵なんだけど国王らしさをもっとエピソードとして描ければ彼女のヒロイン力は増したのになあ、と。外側の設定はうまく出来ているだけに勿体ないとも感じました。そこが個人的には残念ポイントだったかなぁ、と。
ただこの作品まだまだ語り足りてないところがあります。続刊が出れば尻上がりにクオリティも上がっていきそうですし、またこの作品の続きを読みたいなと素直に思いました。