魔術監獄のマリアンヌ/松山剛
お気に入り度:☆★★★★
<感想>
最高だった!!
これは“魔術”が忌避され、呪いとされる時代の出来事――。
魔術師たちの監獄である『ヴァッセルヘルム大監獄』に着任した若き刑法官マリアンヌへ、国から衝撃の厳命が下った。それは数年前、魔術師たちの反乱を扇動して捕らえられた男ギルロアとともに、未だ逃亡を続ける反乱の首謀者レメディオスを捕縛せよというものだった。
反乱軍と王国軍の戦いで故郷と両親を失ったマリアンヌと、反乱軍の魔術師にして大犯罪者であるギルロア。水と油の二人は、口論を重ねながらも旅を続ける。
その最中、マリアンヌはかつての魔術師たちの反乱に隠された“真実”に少しずつ近づいていき――。
松山先生が電撃文庫で刊行されるのは実に二年ぶりということらしいですが、待ってましたという感じ。先生のデビュー作である『雨の日のアイリス』がとっても大好きで、期待していた本作ではありますが、期待を裏切らない出来になっていたかなと。
掴みどころのないギルロアと真面目ちゃんのマリアンヌの掛け合いは読んでいて微笑ましいですし、序盤から引っ張って最後に明かされる真実も実に作品の余韻を生み出していて良かった。
物語の舞台となるのは”魔術”が忌避され呪いとされる世界。大罪を犯した魔術師たちは『ヴァッセルヘルム魔術大監獄』という絶海の孤島に幽閉されるのが常で、主人公であるマリアンヌはそんなヴァッセルヘルム大監獄の刑法官として従事する真面目な魔術師。
そんなマリアンヌに国から勅命でとある依頼が舞い込みます。それは王国に楯突いた者を収容する『特房』にいるギルロア・バスクを率いて、反乱軍の魔術師ロス・レメディオスを捕縛するというもの。
物語のベースとしてはこの二人がレメディアスを求めるというもの。この二人の絡みがとても好きです。謎多き囚人ギルロアの煮え切らない態度に真面目ちゃんのマリアンヌが振り回される様は見ていてほっこりしますし、このギルロアという男、ちゃらんぽらんなところもありながらも端々ではマリアンヌのことを考えて行動、発言できているため抵抗感が少ないんですね。
物語の展開としても
僕はエピローグのシーンが大好きです。レメディオスの言葉に乗っからずに否定して、それでもこれまでの自分とは違う道をしっかり選んだ。それが意味するところを考えるとうるっときます。マリアンヌが彼女らしく成長したという事実に勇気を貰えるような、そんな気がしてます。