かっぱの書棚

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境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神/絵戸太郎

 

境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神 (MF文庫J)

境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神 (MF文庫J)

 

 評価:☆★★★★

 

 

 

<感想>

王道の異能バトルファンタジー!

 

ストレートでいい作品でした。

完成度は高いのに端々に新人っぽさを感じさせる瑞々しい熱さが作品の魅力を支えてるように感じます。

 

舞台となるのは妖魔界の者たちが移り住む妖精人自治区・赤枝宮という街。赤枝宮は異界の物理法則を解明した技術──魔法技術<テクノマギア>の都市で、航空魔術を駆使して空飛ぶ自家用飛行船が飛び交ったり、杖を持った魔術師や亜人などが闊歩する人間界と妖魔界の玄関口などと称されている。

 

魔術師である主人公・鬼柳玲生は双子の妹を庇って死んでしまったはずが、紅髪の半人半蛇の少女・花蓮に命を救われる。少女は言った。

「私はあなたの妻です」

玲生は世に新たな魔法技術を生み出す<王>となり、そのパートナーとして蛇女である花蓮とともに<王>の道を歩き出す学園異能バトル作品。

 

本作は何よりも新鮮な熱さが売りの作品として成立していると思います。

ほんとに主人公の玲生が熱くて良い漢なんですけど、熱苦しくなりすぎない上手い按配で描かれていてとても好感の持てる主人公として機能していました。

 

また、息の詰まるような緊迫したバトルシーンもあればシリアスに寄りすぎないように花蓮や双子の妹たちがコミカルにドタバタと動いたりして、その絶妙なバランス感覚は巧いなあと思ったりも。

というか主人公の首を絞め殺すヒロインって一周回ってかわいくないですか(錯乱)

 

物語の根幹である<王>同士の対立の描き方に関しても自己中心的な俺が俺がの感情論のぶつけ合いにおさまらずに、誰のために何をするのか。守るべき存在は何であるのか。といった信念や執念を重点に戦わせたのは物語の深みを考えても良い効果を生み出していたかなと。

 

とはいえ、主人公の言い分に僕は少し納得のいってない部分もあるのですが(笑)

 

キャラクターはぶっちゃけ色んな夫婦(この言い方でいいのか)が出てくるのでそこも魅力的なのですが、個人的には双子の妹ちゃん、燦と燐が二人セットで好きだったりします。やかましくて、面倒くさくて、でも放っておけない。きっと玲生は二人のことをそう評していると思うんですけど読み手である僕もまったく同じ印象でそこにシンパシーを感じたりもするんですよね。

ただそれ以上に、恥ずかしがってなかなか本音は言わないけれど、心の奥底では玲生のことが大好きなんだなって思わせてくれるシーンがあります。僕はそこがお気に入りだったりするので双子の妹ちゃんたちの素直じゃないとこが大変おいしゅうございます。

 

さて、世界観やキャラクター、描写にセリフ回し。新人とは思えないくらいに完成度の高い作品となっていましたが、他の<王>や今後の展開などが非常に気になるシリーズではありますね。

主人公の考え方がちっと僕の中で引っかかったところはあるものの、お話は熱く笑えて面白い物にしあがっているので続刊に期待です。あとパルプピロシさんの絵、いいっすね。