かっぱの書棚

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りゅうおうのおしごと! 5/白鳥士郎

 

りゅうおうのおしごと! 5 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 5 (GA文庫)

 

 評価:★★★★★

 

 

 

<感想>

5巻にして集大成であり最高傑作!!

 

電車の中で読んでたんです。人も沢山いて、ガヤガヤしてて。でも、気づくと泣いてました。人目も憚らずに号泣してました。努力と才能というのは何かをつづける上で切っても離せないものです。それは時に薄汚れていて不格好に見えるかもしれませんが、大切なものなのではないかと感じさせられました。

 

物語は主人公・九頭竜八一の初の防衛戦から始まる。相手は生きる伝説である最強の名人。タイトル獲得99期、永世六冠を誇り他の棋士からも「神」と持て囃されるほどの人物だ。そんな最強の挑戦者を迎え撃つべくハワイへと訪れた八一。しかし、常夏の島には弟子や師匠までついてくることに!? ほんわかした空気が漂う中、幕を開けた防衛戦。それは八一をどん底にまで叩きつける悪夢の棋戦の始まりだった。このままでは勝てない。最後の最後まで追い込まれた八一が本当に大切なものに気づくとき、物語の熱量は最高潮となる──

 

熱い!! 激アツ!!

もうこれに尽きます。いつものコメディを前面に押し出した空気で舌触りこそポップに仕上がっていますが中盤からの流れは心を揺さぶられ、涙腺を刺激され、最後には菩薩となる超弩級の盛り上がり! 将棋の事なんてほとんどわからないのにここまでドストレートに心に刺さるのは作品の、キャラクターの熱量も遠因なのでしょうか。

 

集大成という言葉を使いましたがこれには訳があって、深いところはまあ読んでくださいよという話になるのですが、今回は今まで必死に積み上げてきたものにただただ惑わされるお話になっています。努力して積み上げた武器、手を取り合って頑張ってきた仲間。すべてが八一の目の前に立ち塞がります。追い込まれて、わからなくなって。どん底まで突き落されます。強くなりたいとも思います。けれど、本当に大切なものが何であるか気づいたとき、八一は竜王として折れた翼を再度広げるんです。

 

もう、この流れが素晴らしい! 今まで積み上げてきたものに傷つけられ、悩まされ、それでも本当に大切なものは特別なものなんかじゃなかった。案外誰しもが持ってる大したことのないものなんだと理解してからの八一は本当にカッコイイです。

 

あと名人の辿ってきた道のことを考えるとラストの二人の一分将棋なんかは常に号泣状態です。理由は言いません。読んでください。二人の将棋バカの気持ちと気持ちのぶつかり合い。控えめに言って最高に爽快で読後の余韻がハンパなかったです!

 

キャラクター面に関しては色々言いたいことがあるんです。あいはやっぱり一番弟子だなとか。天衣はその年にして陰で支える系のいい女だな、とか。姉弟子さんちょっと本気出しすぎィ! とか。たくさん。今回はおっさんたちも凄い良かった。というかおっさんにも泣かされた。でもですよ! 今回のMVPは桂香さんです! これがもぉ~~最高すぎた。3巻があってこの5巻の桂香さんはずるすぎる! 一生ついていきますお姉さま!!

 

さてさて、今後の展開なのですが何とか終わらずに続くようですね。物語の雰囲気からも本気で今回で終わってしまうのではないかという気がしたのでとりあえずは一安心です。ただこの巻のお話で九頭竜八一の物語としてはある意味でのひとつの終着点なのかなと思いました。今後は弟子にスポットを当てた教育モノ方面に力が入るのかなあと何となく思ったりも。今後もこの5巻の熱さに負けない熱さ、期待したいところです!