かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

姫咲アテナは実在しない。/麻宮楓

 

姫咲アテナは実在しない。 (電撃文庫)

姫咲アテナは実在しない。 (電撃文庫)

 

 評価:☆★★★★

 

 麻宮楓さんの作品は初めて!

 

<感想>

佐倉くんもう少し柔軟になろうよ!!

 

読んで真っ先に思ったのはそれでした。というのも物語の主人公である佐倉くんが思ってるよりもずっと頑固な性格をしていてこちらの物語への没入感を少し損なわせてる空気があったというか。

けれども、若い頃ってそういうものなのかもしれないなあって思います。無理だと言われれば言われるほど完璧を目指してしまって、頑なになってしまって、いつからか後に戻れなくなってがんじがらめになってしまう。

 

主人公である佐倉和泉は寂れた廃墟で唐突に現れた露出度の高い美少女・姫咲アテナと出逢う。佐倉は頭に浮かんだ少女の名前を口に出す。それは他でもないアテナの名前だった。理由は明白だった。自分が妄想の中で思い描いてる少女にアテナは似すぎていたのだ。佐倉はアテナを頑なに自分の妄想が具現化した存在だと認めないのだが──

 

とりあえずアテナちゃんがかわいい。開幕直後からかわいい。佐倉くんの行動にちょっとモヤっとする箇所もなくはないのですが、このアテナちゃんの等身大の可愛らしさがうまく中和してるなあという印象を受ける。

 

また、アテナちゃんがここまでして誰かに自分の存在を認めてもらいたい理由は後々語られるのですが、この辺りのキャラクターの心情と繋げたエピソードを出すタイミングは巧かったなあと感じさせられました。

 

キャラクター的にはあおいの影が少し薄まりすぎてたような気がしてどうせダブルヒロイン体制を取るのならもう少し佐倉くんとの絡みを入れておけば佐倉くんのネガティブも減ってあおいの見せ場も立ってもう少し読みやすくなったんじゃないかなあと思います。とはいえ、それを取ってもお釣りが出るくらいに可愛らしいアテナちゃんがいたので僕に不満はございません! 

 

さてさて、単巻ものとして綺麗にまとまっていたこともありますし続刊はないでしょう。もう一押し欲しい気持ちはありますが全体的にかっちりと手堅く仕上がっていたように感じますので悪い印象はないです。作者さんの過去作掘り返してみようかなあ。