かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

俺の青春を生け贄に、彼女の前髪をオープン/凪木エコ

評価:☆★★★★

 

 第29回ファンタジア大賞、《金賞》受賞作!

 

<感想>

幼なじみと始めるおバカなラブコメディ!

 

8年ぶりに帰国した金髪ハーフでオッドアイの瞳を持つ幼なじみ・サリュ=ニコルソン。口癖は「タロ様のお嫁さんになるです!」で、タロ様というのは本作の主人公・桃山太郎の愛称。かつての暮らしと変わらぬスキンシップにドギマギをしながらも悪い気はしていなかった太郎だったが、久々に再会したサリュには大きなコンプレックスができていた。まともに人の目も見れないほどにコミュ障になっていたのです。嫌がるサリュなどお構いなしに欠点克服生活が幕を開ける。そこにもう一人の幼なじみ・八重樫桜も混ざってドタバタした日常の始まりだ。太郎は自分の青春を賭け、サリュのコミュ障を治すことができるのか──

 

とにかく太郎とサリュの関係性が良い! もちろんサリュの可愛さは当然ではあるのですが、八年前に交わした毎週電話するというその場のノリみたいな約束を律儀に守ってイチャイチャする幼なじみというある意味で純粋な関係性が素敵だなって感じました。というか果たしてそんな幼なじみが許されていいのでしょうか。ずるいですよ!

 

再会してからもサリュは相変わらず太郎のことが大好きでべったりしてはスキンシップを取る毎日。でもそうなると、現在の幼なじみである桜も黙っていられないわけですよ。そうして始まる二人の太郎の奪い合い。いやあ、こういう頭の悪くなりそうなイチャイチャラブコメってたまに読みたくなるから困ったものですよ。

 

お話のメインとしてはコミュ障となってしまったサリュの欠点克服に努めるといったものです。ハーフ美少女だし目の色まで違うとなったら注目の的なので、それがコンプレックスになることも珍しくないでしょう。そんな人を見るのが怖くて視界を前髪でガードするサリュの欠点克服方法は「動画配信で美少女生主として君臨して自信をつける」というもの。また頭の悪そうな響きですね(褒め言葉)。

 

動画配信の中で色んな体験をすることでサリュは自信をつけていきます。なのに欠点も改善されていってるのに最後のもう一押しが足りない。ここからの物語の落とし方が「幼なじみ」という関係性だからこそ映える流れとなっていて僕は印象に残っています。近すぎるからこそ分かってしまうことがあって、分からないことだってある。八年間電話し続けただけあるよ君たち!

 

キャラクターに関しては桜が好きです! お分かりの通りサリュが正妻ムードなわけで桜からは滲み出てるわけですよ、負けヒロインのオーラが!(やめろ) 勝ち気な性格をしていて太郎のプレゼントなんて捨てたと断言しておきながらちゃっかり愛用してたりするところなんてベタそのものなんですけど「好き!」ってなっちゃうんですよね。この惹かれてしまう負けヒロインの魅力ってなんなんでしょう。

 

続刊はどうなんでしょうか。綺麗にまとまってはいますが物語は始まったばかりなので幾らでも広げようはあると思いますが、次巻ではもう少し桜とのことを掘り下げたお話とかやってくれるといいなって思ったりもします。

 

さてさて、このおバカなラブコメの温度感は実に最近のファンタジア文庫らしいチョイスでもあり読みやすくもあり良かったです。ソラゴトのようなちょっと新規開拓というか普段とは違う毛色もいいですが、こういった実家の安心感というかレーベルカラーのような作品も大事だなあと思います。