天使と鴉のプレセピオ─人狼×討伐のメソッド Ⅰ/斜守モル
天使と鴉のプレセピオ -人狼×討伐のメソッドI- (MF文庫J)
- 作者: 斜守モル,マナカッコワライ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/12/23
- メディア: 文庫
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評価:☆★★★★
ジャンル:異能バトル
<感想>
中盤からの息も詰まる展開が素晴らしい!!
新人賞だから詰めの甘さはある。こうすればもっと完成度が高くなっただろうなって気持ちもあった。けれど、そんな些細な引っ掛かりをも吹き飛ばすドラマがこの作品には眠っている!
舞台は、人狼という一年に一度人間を食べなければ死んでしまう人外の生き物が人に紛れて住む世界。
そんな人狼のことを討伐する役職──『討伐官』に着任したばかりの少年・連野壮馬と自らを天使と名乗る討伐官の篠崎樫乃が遺体にV字の傷痕を残す《VOLF》と称される人狼の事件に遭遇する。かつて失くした樫乃の親にもV字の傷が入っていたことをきっかけに物語は大きく動き出すことになる──。
こう書くと物語は壮馬と樫乃の二人を中心に展開されるように感じるかもしれませんが、なんとダブル主人公構成になっているところが本作の魅力。
人狼を討伐する側としての連野壮馬。人狼を調査するプロファイラーとして才覚を発揮する吉田射京という青年。討伐官とプロファイラーという違った切り口で物語が語られるのは男の子心がくすぐられて良いものですね。
物語が大きく動き出すのは中盤から。序盤では人狼に対して人が武装して制圧していく王道の異能バトルなのかと思っていました。
しかし、
侵才の人狼《VOLF》の事件。
人狼の正体を見破ることのできる《暴きの目》。
あらゆる要素が出揃ってから物語は大きく動き始めることになります。
もうここからが本当に面白い!徐々に核心に近づいていくスリル感に、回収されていく伏線、そして隠された真実が明かされるラスト。完璧です。
──『真実は、いつも残酷で、そして切ない』
これはキャッチコピーですが、ぜひ暴いてはならない真実にたどり着いてほしい。
切なくて、やるせなくて、どうしようもなくて、それでもきっと胸に爪痕を残してくれる作品となっていると思います。
キャラクターもとても良かったです。というのも、盛り上がる中盤以降でキャラクターの背景が色濃く描かれるのですが、これがまたドラマチックに仕上げてあって登場人物たちの魅力がぐぐっと伝わる運びとなっています。壮馬に入れ込んでしまうのは仕方のないことね。
もちろん主役である壮馬と樫乃も素晴らしいのですが、好きなキャラとなると僕はやっぱり吉田射京なんですね。普段は面倒くさがりのやる気なしなのに人並み外れた能力を実は持っていて決めるところはきっちり決める。《VOLF》に対して芽生えた感情の描き方とか僕的にかなりポイント高かったですね!
どうやらナンバリングされていることもありますし、続刊は出るのでしょうね。まだ拾われていない設定などもありますしね。いやあ、それでも一巻からなかなかに重厚な物語となっていたので、次巻がどう仕上がってくるのか今から楽しみな一作です。