かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

ぼくたちが本当にシタかったこと/白都くろの

 

ぼくたちが本当にシタかったこと (ガガガ文庫)

ぼくたちが本当にシタかったこと (ガガガ文庫)

 

 評価:☆★★★★

 

 

<ネタバレ感想>

 

AVという背徳感と青春モノとしてのキラキラ感のバランスが素晴らしい!!

 

全年齢対象のライトノベルで「AV」というスレスレ……セフト……いやアウトな題材を使って青春モノをやる。いやあ、実にガガガらしくて良いと思います!

 

前半は同級生のあの子ももしかしたら将来AVに出るかもというもやっとした感情やどろっとした背徳感で心を揺さぶって、後半ではド直球に素直な青春モノとして描く。なんとも美しい構成だなあと感心させられました。

 

舞台となる成人映像専門学校、略して成専は「アダルトコンテンツをつくる人間を教育」する専門学校である。主人公・渡戸愁は実家の生活が苦しいこともあり、格安の授業料で通うことのできる成専に通い始めた新入生です。そこで色んな少女と出会うことになります。

 

「性」を題材にした小説家になりたい少女。

元ジュニアアイドルとして名を馳せた少女。

AVデビュー済とひそかに噂される少女。

 

ほーんといろんな少女が学園には在籍してるんですね。

前半部分はとにかく悩まされます。読んでてこう胸の奥がちりちりとします。

 

だってこの学園は特殊だから!

この学校、アダルトメディアの製作者を育てることを理念にあげてるかと思いきや、それと並行して女優の教育にも手をかけてるんですね。

 

つまるところ、クラスのあの子やこの子も数年後にはアダルトビデオに出ているかもしれないという後ろめたい気持ちでいっぱいいっぱいになるんですね。その辺りの葛藤がリアルに描かれていて読んでるこちら側からしてもごくりと生唾を呑まされるわけです、ごくり。

 

基本的にはライトノベルでこういった題材が用いられるときはエロコメディとして軽く、ポップで、あくまで作り物として描かれる。その一方で本作はそんな誰しもが胸に抱えているエロスに対して誤魔化さず、目を逸らさずに真っ向から向かい合うことで逆に清潔感を演出できているところを僕は評価したいです。ブラボー!

 

また、後半の青春ドラマの良さったらない。 これだけ背徳感をビシバシと感じさせてくれる作品に仕上がっているのに序盤から悩んで悩んでもがいてきた愁がひとつの結果をつくりあげて、その姿勢が周りに評価される。こうして世界が広がっていく。良い話じゃないですか。

 

愁は自分の本当にシタいことを見つけられるのでしょうか。

もう少し、この物語に触れて愁の行く末を見届けたいなあ、と。

そんな風に思わせてくれる一冊。