かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

奴隷エルフちゃんを英雄にプロデュースします!崖っぷちから始める世界寿命の延ばし方/秋月煌介

 

 評価:☆★★★★

 

 

<ネタバレ感想>

 

ポップなタイトルで重いストーリー!

 

はっきり言って面白かった!

というのもタイトルを見た感じだとライトなラブコメにでも仕上がっているのかなと考えさせられるんだけど、実際はシビアでシリアスなストーリーが繰り広げられるんだから驚かされました。

 

というのも、主人公はこの世界を救う「英雄」という存在として日々<黙示録の獣>(アロスティア)と呼ばれる怪物と戦う存在でした。しかし、この世界がなかなかに厄介な状態まで落ち込んでいまして、戦わなければ待つのは死で、戦っても死に近づくような現況。つまりどれだけ足掻こうが待っているのは死でしかないというさながらディストピアのような世界観だったりするんですね。

 

それだけでもうメチャクチャな世界だなと感じるのですが、貴族の方々はヒューイットに弟子を取って育成しろと言うのです。けれど、これがまたまた厄介な話でヒューイットは弟子に関してある種のトラウマを抱えていたりしました。それは、かつて自分の弟子のピンチに助けてやることができずに見殺しにしてしまったという過去です。

 

そんな現状で発覚するのは現・英雄であるヒューイットの余命は一ヶ月しかないという衝撃的な事実。

 

そこまで徹底的に世界に厳しくしなくてもいいじゃないかという

 

ただ、やはりこの物語で一番美しいのはヒューイとフィオの師弟愛だ。

ヒューイは初めこそ、たった一人の英雄に頼らないといけないようじゃこんな世界は滅んでも仕方がないという考えの持ち主だった。それも当然の話で、貴族のお偉いさん方は実にもならない会議ばかり行って、肝心なところは英雄任せ。

 

けれど、フィオとの出会いが少しずつヒューイを変えていくんですね。新鮮な毎日が始まると、息も抜けない日々は鳴りを潜めた。精神的にも身体的にも限界だったヒューイを救ったのは奇しくもなんの役にも立たない弟子であるフィオだったというところが素敵です。

 

世界のために戦うと聞くと力が入ってしまいますが、もっと素直にシンプルに考えちゃっていいんですよね。自分の大切な人が明日も変わらず生きていける場所を守るために立ち上がる。

 

実に王道な展開でラストのシーンは思わず胸が熱くなりました。ベタだけどそういったシーンがなんだかんだいって一番響くのだなあと。