カネは敗者のまわりもの/玖城ナギ
お気に入り度:☆☆★★★
<感想>
敗者であるからこそ辿り着いた結末!!
あらゆる奇跡を買えるカネ「魔石通貨」。それを巡り戦う失井敗斗は、ある日勝ち取った資産に含まれていた少女メリアの持ち主となる。しかし彼女が秘めた価値は、果てなき争奪戦へ二人を導くほどに規格外のもので!?
発想には光るものがある。金融に着目したところは新鮮に感じましたし、物語としても盛り上がるところは盛り上がっていて読んでいて楽しかった。けれど、大賞という看板を背負う作品にしては少し作品単体の引っ張っていくようなインパクトは小さかったかなあと思いました。
負けっぱなしの人生を歩む少年、失井敗人はどんな願い事すら叶えてしまえる「魔法通貨」を巡って日々《取引》に明け暮れていました。そんな敗人はとある戦いにより一人の少女と出会うことになります。少女メリアは資産で、そんな出会いから敗人の日常は苛烈になっていって──
このような導入で物語は動き出していくのですが、難点となるのが世界観や設定といった情報が少なく曖昧で読み手としてどうとらえればいいのか判断に困るところがあるんですね。
名前にもなっている『敗北』の文字が主人公とどうつながるかであったり、「魔石通貨」や「取引」、「資産」といった単語も浮いてしまっているようにも感じます。そこが第一歩として入り込みづらくなっているのかなと思いました。