かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

……なんでそんな、ばかなこと聞くの?/鈴木大輔

 

 評価:☆☆★★★

 

 

<感想>

どこか物悲しい舞台で紡がれる青春ストーリー

 

高校生、藤沢大和(ふじさわ・やまと)はある日――死んだ。
しかし、幼なじみの少女、青山凛虎(あおやま・りんこ)はこう告げる。
「わたしがちゃんと生き返らせる。死なせないよ『今度は』」と。
――これは『終わりの物語』だ。郡上踊りが終わるまでの間、死と生が入り混じるこの場所で、『なぜ死んでしまったかも忘れ』そこに存在している大和。そして、『ある秘密』を抱えながらも、大和を生き返らせようとする凛虎。不器用で、真っ直ぐで、凛としたひと夏が今――「終わる」。

 

作中の雰囲気が癖になる。読んで一番初めに思ったのはそれでした。田舎特有の、昔話を交えるからこその、どこか物悲しい寂しい空気感というのが序盤から感じられてじんわりと胸の内に沁み込んでくるような印象を受けたのが第一印象。

 

終わりゆく夏、過ぎた日々、不器用な関係性、そのあたりの作品の中核を担っているものが共通していてうまく溶け込んでいたので納得感がつよいのも大きい。

 

ただ思っていたよりもずっと「魔女」であったり「境界」であったり穏やかじゃない要素が飛び出してきてイマイチ物語の中に入り込めない自分がいてそこは少し後悔したりもして。

 

読む前はここまで幻想的というか非日常的な物語になるとは思っていなかったので面食らったところが正直でもう一度読み直したらもう少ししっくりくるのかなと思います。

 

ただお話自体は流石なもので不思議な世界観で紡がれる甘くもあり切なくもある物語は決して幸せなハッピーエンドではないのかもしれないけどぶつかりあって出した諦めの悪い二人だけの答えだからこそ独特な味わいが感じられました。

 

キャラクターはなんといっても凜虎がかわいい。頑固で、言葉足らずで、不器用で、だけど心には熱い感情を宿してる凜虎はすごく魅力的だしずっと隠してきた秘密が明らかになるにつれて愛着がわいてきてタイトルにもなってるセリフには思わずやられてしまいました。