かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

ガチャにゆだねる異世界廃人生活/時野洋輔

 

 評価:☆★★★★

 

 

 

<感想>

ガチャを使った物語展開は大胆で新しい!

 

異世界転生という手垢のつきまくった舞台設定を上書きすかのようにガチャという新鮮な要素を付け足すことで物語への窓口を大きくしているところがキャッチ―で良いと思いました。

 

主人公・はガチャを回すことに命をかけていると言ってもいい少年だ。

 

まず面白いなと思ったのはガチャの使い方。スマートフォンが必需品となった現代では誰であろうと一度はソーシャルゲームのガチャを回したことはあるでしょう。そのガチャから出てくるアイテムやキャラには当たりもあれば外れだってある。それは当然のことなのですが、そのガチャから出てきた物を使って異世界で生活をするというのが基本の物語の下地になってる。このアイテムたちがいかにもゴミアイテムにしか見えないものが沢山出てくるわけです。まあガチャってそんなもんです。そこまで忠実に現実を再現しないであげてと思わなくもないですが(笑)

ただこの利用価値のなさそうなアイテムたちが物語が進むにつれてひょんなことからうまく活用できたりするのが本作の面白いところ。読み終わる頃にはガチャが大好きでガチャを回すことにとことんこだわりを見せるマワルだからこそ、無駄にならなかったんだなあという謎の説得感が込み上げてきます。

 

また、ガチャを回すのに必要なのがお金じゃないというところがポイントになっていました。人に親切にしたらしただけポイントが溜まるという設定が組み込まれていて、そのポイントでガチャを回す仕組み。だからガチャを回したいという本音を隠して人に親切にする必要が出てくるわけですが、ここが主人公であるマワルの魅力の一つかなと思います。完全に下心主体でヒト助けをしてるのに嫌らしさがないんですね。むしろ一周回って爽やかさすら感じさせる。これってマワルの人の良さが存分に描かれているから「ガチャのため」という理由が悪方向にぶれずに人間らしい適度な本音として作用してると思うんですね。この辺りのキャラクターの描き方は作風と見事にマッチしていて印象に残りました。

 

さてさて、まだまだマワルの廃人生活は始まったばかり。ここでの物語はまだまだ続いていくんじゃないかなと思われます。くだらないものから大切なものまでガチャを通してマワルがどんなものを手に入れていくのか今後が楽しみな一作!