かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

滅びゆく世界を救うために必要な俺以外の主人公の数を求めよ 2/みかみてれん

 

 評価:☆★★★★

 

 カクヨム発の異世界転生モノ、第二弾!

 

<感想>

一皮むけた面白さ!!

 

前巻が素材は良いものの構成や小道具で少し惜しいなあと思う箇所のあった『ほろびゆ』でしたが、今回でぐっと面白さに磨きがかかったように感じました。

 

舞台となるのはテスケーラ。メーソンを求めてヴァルハランドの塔を目指す中で立ち寄った街だ。しかし、ジンはその街でループを味わうことになる。

 

 

 

お話のベースとなるのは時間軸のループ。その何度やり直しても同じ結末に辿り着いてしまうジンの絶望や焦燥が作中全体を通じてよく表現できていたと思います。ループ物の難しさって同じことをやらなければいけないという点にあると思います。必ず結末は収束するというやつですね。そこに対してもうまく差別化を図ることができていたかなあと。

 

また、作中で前巻から放置されてきた「リルネは主人公なのかどうでないのか問題」や「スターシアの瞳の能力」に対する疑問点がきちんと謎として掲示されたのは今後の物語への良い引きとして充分に機能していたと思います。

 

新キャラである猫針団や聖女様の設定もとても良かったです。街として認められていない第四区という地域に住む身寄りのない人たち。そこの住民とと聖女様に関わりがあるはずもないのに、どうやら共通点があるらしく・・・。って設定ひとつ取っても実にファンタジー作品の王道の系譜を往く要素で読んでいてロマンを感じました。

 

キャラクターでいえばクライが最高でした。というのも、そこがこの作品の狡いところで主人公が沢山出てくるんですよね。その言葉ってまさしくそのままの意味で、色んな背景を持ったキャラクターを登場させることができるということ。みんなが主役。この言葉を体現していたのがクライでした。最初こそ絶望色に染まって表情だって沈んでいたというのに最後はちゃんと主人公してました。追い込まれずに無双するのが主人公じゃない。追い込まれても折れない心を持っているのが主人公なんですよね。そう考えるとジンとクライの関係性というか絡みというのは読めば読むほどぐっとくるものがありますね。

 

さてさて、続刊ですが非常に楽しみになってきました! 二巻になった途端に駆け出すようにお話自体も面白くなり、今後追及していかなければいけないであろう謎にも触れられ、早いところジンたちの行く末を見届けたいです。次はどんな主人公が出てくるのか。楽しみです。