かっぱの書棚

ライトノベルの感想などを書きます

勇者のパーティで、僕だけ二軍!?/布施瓢箪

 

勇者のパーティで、僕だけ二軍!? (ファンタジア文庫)

勇者のパーティで、僕だけ二軍!? (ファンタジア文庫)

 

 評価:☆★★★★

 

カクヨム<特別賞>受賞作!

 

<感想>

キャラクターのバランス感覚が絶妙!!

 

WEB小説に面白い作品があるなんてことは当然わかってはいるのですが、なかなか手を出せないのが現状なわけで、こうしてWEBの文脈が書籍化に漕ぎ付くというのは良いことだなあと思います。

 

魔王討伐のための勇者のパーティで二軍呼ばわりされる少年・ロキはかつて自分の村に訪れた勇者の圧倒的な強さに魅入られた。それがきっかけで勇者のパーティに帯同させてもらえることになったが、任されるのは炊事に洗濯に買い出しと雑務ばかりだった。しかも憧れの存在であるはずの勇者が女遊びに酒癖まで悪いクズ野郎とくればロキも黙っていられない。今の現状を打破しようと剣の修行に励む折り、天才魔法使いとして一軍の地位を確固たる物としていたルミアが唐突に二軍落ちすることが決まった。性格に難はあるが実力は申し分ない。ロキは同じ二軍仲間となったルミアと共に行動することになるのだが──。これは実力も才能もない一人の少年が絶対的な力を持つ勇者に下剋上する冒険ファンタジー!

 

めーちゃくちゃ面白かったです! ジャンル的には下剋上もの! 力のない自分のことをなんとか勇者に認めさせようとコツコツ努力を重ねるロキはかっこいいですね。多彩なヒロインたちとの関係性もどうなっていくのか気になる一巻でした。

 

とりあえず序盤からクズ勇者がクズです。女遊びに酒癖も悪くて自己中心的で周りを道具としか思っていないような発言にはイラッとさせられます。そんな勇者に振り回されながら物語は進むのですがラストまでの流れがいいです。主人公が脱二軍という目標を掲げて特訓から始まり重ねてきた努力がうまく物語展開に反映されているので説得力もあり、読んでいてしっくりきます。

 

そしてこの作品なんと言っても魅力はキャラクターにあると思います。読んでいて物語が進むにつれてキャラクターに湧き上がる愛着がどんどん積もっていく。最初はそこまで気にしていなかったキャラクターにも作品を読み終わるころには魅力を感じるのが不思議で仕方ありません。序盤は主人公が自分の現状に嫌気が差していて徐々に心持ちが変わって他のキャラクターを見ることができるようになったという深読みもできて大満足です!

 

またロキが良いヤツなんですよね。なりたい自分になるために頑張ることを惜しまないし、自分がこうだと思ったことはやり通す。まだ実力は伴っていないのですが志からは熱い主人公のそれを感じて今後の成長にますますの期待を寄せたくなります。

 

あとルミナ! この子がほんとにかわいい! 天才魔法使いである彼女は作中で二軍に落とされてしまいますが、どうしても一軍の定位置を取り戻して魔王を討ち倒さないといけない理由がありました。健気に頑張る孤独の魔法使い。その真相をぜひ知って頂きたいと思いました。

 

さてさて、シリーズも始まったばかりということで今後どう物語が進んでいくのかが気になるところです。クズ勇者の本心はどうなのか。各ヒロインたちとの関係は如何に。続刊も非常に楽しみでございます。